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2008,05,11, Sunday
松本清張といえば、若い頃、点と線、ゼロの焦点などミステリーを読みとばしたことがあった。最近、昭和史発掘をおもしろく読んでいるが、その膨大な知識量に圧倒されて、清張そのひとに興味を持ち始めた。才能といってしまえば、それまでであるのだけれど、どうして、このような作家が誕生したのか。
ちょうどそんな時、<松本清張への召集令状>という本がでた。33歳、両親と妻子の7人家族をささえる新聞社の意匠部職人に何故、赤紙がきたのか。当時でも、33歳での召集はまれだったらしい。そのことで、復員後、彼はその何故をさぐっていく。 今次大戦でのおびただしい軍人、軍属戦死者のうち、召集令状を受け取った者たちのなかに、あってはならない選出方法―万人が納得できる合理的手段でないーがひそんでいたこと。 国家権力の名の下におこなわれた召集令状の発行に、出先機関の小役人の恣意的な動機、小さな懲らしめや報復、意趣がえしといった個人的な思惑がひそかに横行して、召集令状の発行が左右された。現場の役人や軍人たちによるこうした不正によって、一方は戦場に送られ、一方は平然と召集逃れをする。そんな、あってはならない腐敗のからくりが存在していたのではないか。 松本清張は敗戦にいたるまでの2年間の軍隊生活で、こうした国家権力の実態を骨の髄まで思い知ったのだ。すなわち、人間の生命など、案外にこんな一役人の小手先で自由になるものであり、市役所の吏員のほんのちょっとした鉛筆の動かし方で家族6人の運命が狂ったのかも知れないーという恐ろしい現実である。 この召集令状をめぐるミステリーが<遠い接近>にえがかれた。 そのストリーテイラーとしての才能におどろくが、上に引用した文章のなかみは、今も厳然として、存在していることが腹立たしい。どこかで、おにぎりを食べたい、と書き残して餓死した人がいれば、どこかで不正に何千万ものタクシー代を得ていた生活保護行政の運用、消えた年金の社会保険庁の杜撰な管理。国家権力はあくまで、その末端で運用するひとりひとりの役人がそれを担っていて、そのことを自覚してもらいたいとおもう。 親方日の丸、という無責任な態度、さらには権力をかさにかけ威圧的な態度など、なんとしても許し難い。いや、国家権力を担っている認識があるからこそ、不正をなす官僚がいるのが真相か。 裁判員制度が来年にも始まるらしいが、その選出ははて、どうしてなされるのだろうか。よほどの理由がなければ辞退できないとのことだが、選出は恣意的でないことをどう担保できるのだろうか。 平成の松本清張よ、出でよ、とおもっている。
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| コラム | 09:25 PM | comments (x) | trackback (x) | |

